意欲を持って仕事に取り組みなさいと言葉で言っただけでは、
決して部下は意欲を持つことはない、
というのは管理職者の方ならだれもが直面している現実です。
部下の方にとって、仕事をする上での
大きな動機づけの一つとなるものは、
成長した自分の将来の姿がイメージできるかどうかにあります。
管理職者は、部下の3年後のあるべき姿と
その実現のための道筋をイメージし、
部下と共有することが必要です。
管理職者からの一方的な押し付けではなく、
3年後に部下は、どのような能力を身につけ、
どのような仕事ができなければならないのか、
どのような役割を担っていなければならないのかを、
イメージしたものを部下に話し、
部下の希望や意向を確認し、お互いに納得した上で、
3年後のあるべき姿、目標とその実現のための
行動計画を設定することが重要です。
部下は、3年後の自分の姿、目標が明確にイメージでき、
それが希望に満ちた、納得できるものであると
日々の仕事の大きな動機づけとなります。
■部下が意欲を持って仕事をする環境を
つくることができるのは、上司である自分しかいない
心理学者のミハイ・チクセントミハイという方の
理論にフロー体験というものがあります。
フローは、「時を忘れるくらい、完全に集中して
ものごとに取組んでいる精神的な状態。
自分自身の心理的エネルギーが100%
今取組んでいる対象へ注がれている状態」を表し、
下記のような状況をいいます。
1.取り組むべきことの目標が明確であり、
自分の能力に対して適度に難しいものである。
2.取組んでいるものが、自分でコントロール可能である。
3.取り組んでいるものに対して直接的なフィードバックがある。
4.取組んでいるものに集中できる環境にある。
実際の職場に置き換えますと、部下に仕事を与えるときは、
仕事を通して部下を育成するということを念頭に、部下に仕事を与える。
部下に仕事を与えるときは、仕事の目的や仕事に関する情報、
自分への報告のタイミングや報告の方法などをきちんと伝える。
部下の仕事の進捗管理は、頻度や日時、内容を
あらかじめ決めて計画的に実施し、
部下の能力向上や仕事を遂行するためのアドバイスを的確に行う、
ただし必要以上の口出しをしないように配慮する、
ということになります。
上記の内容は、管理職者として行うべき
部下育成のための基本的な事項となりますが、
部下に対し、このような環境をつくり仕事をさせることができるのは、
上司である自分しかおりません。
部下が、意欲を持って仕事に取り組むかどうかは、
管理職者の仕事であり責任となります。
■部下の心に火を点せるか
部下の心に火を点すには、まず、
管理職者自身の心に火が点っていなければなりません。
管理職者自身が、目標に向かって、
熱意を持って仕事に取り組んでいる
状況となっていることが必要です。
部下は、自分の上司が目標に向かって取り組んでいる姿、
上司が発する言葉、自分自身の将来の姿、
現状の仕事などの中で、自分の心に火を点します。
部下は、自分の心に火を点してくれた上司、
自分を成長させてくれた上司に一生感謝します。
部下の動機づけは、生まれ持った才能でも何でもありません、
学習により身につけることができます。
必要な手順を踏んで、行うべきことを行い、
伝えるべきことを伝えると、
部下を、正しく動機づけすることができます。